糖尿病の診断・治療の目的・管理目標・合併症
糖尿病の診断には血糖検査、尿糖検査、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が必要となります。HbA1cとは過去1〜2ケ月前の血糖管理状況をみる検査です。
糖尿病の初期には症状がないことが多く、健康診断を受診しなければ全く診断がつかないことがほどんどです。糖尿病、なかでも2型糖尿病は40才以上の7人に1人の割合でいまや国民病とも言われています。 健康診断で空腹時血糖値が100mg/dl以上の方、ご家族に糖尿病の方がいらっしゃる方、若いころに比べて太った方、暴飲、暴食をしている方、運動不足、ストレスがたまっている方、巨大児を出産された方など是非糖尿病の検査を受けてみることをお勧めします。
空腹時血糖140mg/dl未満、HbA1c 6.5%未満の場合は
75g糖負荷試験を当日に施行させていただきますので、一応、検査を希望する日の前日は午後9時までに夕食を終え、水以外は口にせず、受診当日の朝食をとらずに午前9時から10時の間にお越しください。なお、糖負荷試験には2時間かかりますので、時間の余裕を見てお越しください。来院前に予約していただくことをお勧めします。

平成22年に診断基準の改定が行われました。下段に診断基準と血糖管理コントロールの指標を示しておきますので、ご参照ください。

治療中の方であっても血糖コントロール不良の方(HbA1c 7%以上)は糖尿病による慢性合併症の予防や進展防止のためには現在の治療内容の見直しが必要となります。当クリニックではHbA1cは6分で結果がわかります。



  高齢者糖尿病患者さんの血糖コントロール目標



                   合併症


T. 糖尿病の三大合併症(神経障害・網膜症・腎症)をご存知ですか?
@神経障害について
最も頻度の高い合併症です。足がつる、こむら返り、足先のしびれ、痛み、ピリピリする感じ、ほてる感じがある方は医療機関を受診した際に相談してください。症状があっても放置していると感覚が鈍くなり、やけど、靴擦れや深爪で足先の傷ができても気づかなくなることもあります。足の傷を放置していると細菌の感染、足の血液循環が悪い方では壊疽(えそ)といって手術を要するようになる場合もあります。自分で風呂に入る際裸足になった時に足を観察するようにしましょう。爪を切る際にも深爪をしないようにしましょう。
立ちくらみ、便秘、下痢、インポテンツなど自律神経障害も多くみられます。
当院では定期的に神経障害の症状、足のチエック、医師による診察(音叉を使った振動覚、打腱器を使った腱反射)を行い、神経障害の早期発見に努めるようにしています。
足病変の危険が高い方にはフットケア指導を受講した看護師が爪切りなど処置をするようにしています。
足や爪の水虫(白癬)も多いみられます。塗る薬や爪白癬には飲む薬を
処方しています。壊疽、巻き爪や壊疽、足趾の変形、高度の胼胝などは関連医療機関の
皮膚科、形成外科に適宜紹介し、連携を図っています。

神経障害の治療としては血糖管理の他、ビタミンB12、エパルレスタット(キネダック)、漢方薬(牛車腎気丸、芍薬甘草湯)、血流改善薬、痛みが強い場合には鎮痛剤(リリカなど)、抗うつ薬(サインバルタ)といった薬の飲む治療を行います。

A網膜(もうまく)症について
糖尿病性網膜症は失明原因の第3位です。糖尿病と診断されたら視力の低下の有無にかかわらず少なくても年に1回は眼科を受診しましょう眼科受診の際には糖尿病連携手帳を持参し、視力検査、眼底検査、白内障検査、眼圧検査を受けるようにしましょう。
網膜症が進行した場合には光凝固療法、眼内注射、飲み薬、、眼薬、手術が必要になる場合もあります。

B腎(じん)症について
腎臓は体の老廃物を尿として排泄する臓器です。また、体にとって必要な成分は
尿から再吸収します。
自覚症状の有無にかかわらず尿検査(尿蛋白、微量アルブミン、尿潜血など)、血液検査(クレアチニン、シスタチンC)を定期的に受けるようにしましょう。腎臓の働きを示すeGFRは血液検査から計算で求められます。足のむくみ(浮腫)や尿の出が悪いといった症状は腎臓の働きがかなり悪くなった際に出てくる症状で、症状が出てからの治療では腎臓の病気の進行を抑えることは難しくなります。微量アルブミン尿が陽性の段階から積極的に体重、血糖、血圧、脂質管理、禁煙、減塩を行うことで病気の進行を抑えることは可能となります。そこで当院では3ケ月に1回、6分迅速で尿微量アルブミン量を測定し、推定塩分摂取量のチエックを尿を用いて行い、臨床検査技師による腎症ステージの説明、療養指導士による体重、血糖、血圧、脂質管理、運動、禁煙指導、管理栄養士によるカロリー、減塩、蛋白適正摂取などの栄養指導をワンチームで行っています。薬物療法では血圧を下げる薬に加え、最近は飲む血糖降下薬のSGLT2阻害薬や注射薬のGLP-1受容体作動薬に腎臓を保護する作用が期待できるという報告がされています。日本人を対象に行われたJ-DOIT3試験でも血糖、血圧、脂質の厳格な管理を行うことで病気の進行を抑えることができたとする報告がされています。
残念ながらこのような早期からの介入ができなかった方で腎臓の働きが急速に悪くなる方がおり、命の危険にせまられる尿毒症、腎不全といった状態に陥った場合には透析(とうせき:血液透析、腹膜透析)治療が必要になる場合があります。
新たに透析治療が必要となる原因疾患の第1位が糖尿病です。そこで
当院では関連医療機関の腎臓内科に適宜紹介し、連携を図りながら腎症の重症化予防の取り組みを行っています。


U. 糖尿病では心臓病、脳卒中、閉塞性動脈硬化症といった大きな血管の病気も合併しやすくなります。心臓病の中でも狭心症、心筋梗塞といった心臓を栄養する冠動脈が血の塊で狭くなる、閉塞する病気や心不全が多く、脳卒中の中でも脳の血管がつまる脳梗塞が多いことが知られています。当院では定期的に心電図や頸動脈エコー、血管伸展性検査(ABI,CAVI)などの検査を行い早期の病変の発見につとめています。病変を有する方は関連医療機関の循環器内科、脳外科、血管外科に適宜紹介し、連携を図りながら動脈硬化の重症化の予防の取り組みを行っています。

V. 糖尿病では
歯周病の方が多いことが知られています。歯周病菌の感染や歯がないことでよく噛んで食べれなくなると血糖コントロールが悪化します。定期的に歯科を受診するようにしましょう。受診の際には糖尿病連携手帳を持参するようにしてください

W.65歳以上の高齢糖尿病患者人口は全糖尿病人口の7割を越え増加しています。高齢糖尿病患者さんは併発症、サルコペニア(筋肉が減る)、フレイル(虚弱)、認知症、悪性新生物(癌)に注意が必要です。当院心療内科では認知症の診断、治療を行っています。介護保険主治医意見書の作成、ケアプランの検討、訪問看護指示など糖尿病患者さんと介護者の負担軽減のお手伝いをさせていただいております。糖尿病患者の死亡時年齢は2001年から2010年の調査では男性、女性ともに日本人の平均寿命より8から11歳短命であったと報告されています。死因で最も多いのは悪性新生物(癌)となっています。特に糖尿病の方に多い癌として膵臓癌、大腸癌、肝臓癌と報告されています。癌検診を定期的に受けることをお勧めしています。骨減少症、転倒、骨折にも注意が必要です。定期的に骨密度測定を受けるようにしましょう。

  糖尿病に関するホームページの紹介
     
ノボノルデイスク 糖尿病サイト
サノフィ DM TOWN





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