女性の糖尿病患者さんへ
糖尿病の患者さんのうち、40歳未満の方では女性の方が多いのをご存知ですか。14歳未満に多い1型糖尿病(以前はインスリン依存型とか小児糖尿病と言われていました)では特に女性が多く、14歳以上では最近では1型糖尿病より2型糖尿病(以前はインスリン非依存型とか成人糖尿病と言われていました)が多くなっています。
女性は月経が始まりますと、女性ホルモン周期の関係で月経が始まってから2週間までの間(排卵前)とそれ以後(排卵後)では血糖のコントロール状態が異なることが知られています。
思春期には精神面の不安定さから食事のとり方が過食や拒食といった摂食障害を起こしやすく、血糖コントロールが悪化しやすくなります。また、若くして発病した方の中には糖尿病だから恋愛はできないとか、結婚、妊娠、出産や就職ができないと悲観的になってしまう方もいらっしゃいます。しかし、糖尿病だからといって恋愛や妊娠、出産、結婚ができないということは決してありません。健康な方となんら変わらない社会生活が営めます。自分が糖尿病であることを障害、ハンデイと受け止めず、前向きに自信を持って生きて下さい。
ただし、恋愛中で肉体関係のあるお付き合いの男性がいる方、結婚したいと考えれている方、子供が欲しいと思っている方などにご忠告しておきます。女性は月経のある間は妊娠する可能性があります。日本では生みたくなければ中絶すればいいという考えの方が増えていますが、どうか皆さんは病気を経験し、命の尊さが充分理解できているのですから、生みたくなければ避妊するよう御自分自身で基礎体温をはかる習慣をつけ排卵日を避けた性交をするとか男性側の協力を得るなどして心がけて下さい。もし、
子供を無事産みたければ、糖尿病と診断された時から正常な血糖状態(HbA1c 6%以下)を維持できるように努力し、合併症を発病させないようにしてください。血糖コントロールが悪い時に妊娠した場合や妊娠中の血糖コントロール不良時(食前血糖100mg/dl以上、食後血糖120mg/dl以上、HbA1c7%以上)には子供に奇形が出てしまたり、出産前に死亡したり、新生児期にいろいろな病気が出てしまうことがあります。また、ご自身も糖尿病の合併症が進んだり、妊娠中毒症にかかってしまうことにもなりますから。正常の血糖状態にするためには食事療法や運動療法を続けることはもちろんのこととして、血糖自己測定に心がけ、妊娠を意識するころおよび妊娠中は1型糖尿病はもちろん血糖降下剤を内服中の2型糖尿病の方も頻回インスリン療法を行うべきです。糖尿病専門医での治療をお勧めします。産婦人科の先生と糖尿病専門医の双方の先生が相談をしながら治療をしてもらい、栄養士から妊娠中の食事療法について指導(6回食、1日指示エネルギーは肥満がなければ350カロリー追加が必要。カルシウムや鉄を補う)してもらったり、看護婦や助産婦に生活上の注意点を指導してもらうなどチームワークのいい医療機関を選ぶことが重要です。
更年期を迎えられた女性患者さんでは、更年期障害でお悩みの方も多いかと思います。更年期障害と御自分で判断されていらっしゃる方のなかに軽いうつ病の方はいらっしゃいます。子育てが終わり、夫婦中の倦怠期にはいり、生きがいがなくなり、気分障害をもたらすこともあります。心療内科の受診をお勧めします。女性はもともと子育てが終わる年代までは子供を守るために男性に比べるといろいろな病気にかかりにくくできています。しかし、閉経(月経がなくなること)し、女性ホルモンの分泌が低下すると、高脂血症(血液中のコレステロールなどの脂質が高くなる病気)や骨粗しょう症(骨がもろくなる病気)、高血圧になりやすくなります。糖尿病である上にそれらの病気が重なりますと、血管の動脈硬化が進みやすくやすく、運動の妨げになり血糖
コントロール悪化の原因ともなります。血圧やコレステロールの測定や、骨密度検査などを定期的に受けるようにし、血圧を 130/85 mmHg以下、総コレステロールは200mg/dl以下にして下さい。





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